スタッフメッセージ

ジェームス三木

子規の宇宙

脚本・演出/ジェームス三木

今や視聴覚全盛の時代、人類は文明を駆使して宇宙を探究し、遺伝子のかたちまで突き止めた。 人間社会はテレビとインターネットでつながっている。

寝たきりの正岡子規には、病室とちっぽけな庭しか見えなかった。 あとは介護の母と妹と、出入りする弟子たちだけである。

子規は自分の目に映るものだけを、丹念に見つめて、ありのままに写生し、活き活きとした自分の宇宙をつくり上げた。

人間本来のみずみずしい視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚をフルに活用し、ものの本質をあざやかに見抜いたのである。

パソコンやケータイには、味も匂いも手ざわりもない。私たちはほんとうに、ものを見ているのだろうか。